エリア
友和エリア
築年月
なし
移住歴
1年
条件
畑をしたい

畑からはじまる、もうひとつの居場所—— 住まなくてもつながれるまち

2026.01.16

土地

廿日市市津田の山あいにある一角で、川本さんは畑を耕している。空き家に住むのではなく、畑から地域に関わるという選択だ。もともとカメラの仕事をしている彼は、「デジタルな世界だけで生きていると、自分には生きる力がないように感じた」と話す。そんなときに出会った大家さんから「畑をやってみたら」と声をかけられ、眠っていた畑のマルチをはがすところから再生し始めた。

畑を始めて2年。最初の1年はなかなか通えずリズムがつくれなかったが、今では生活の一部になっている。育てているのは、日本の在来種の野菜だけ。ささげ豆、じゃがいも、さつまいも、のらぼう菜、からし菜、ワサビ菜、はつか大根、にんじん、水菜、小松菜、きゅうり、ナス、かぼちゃ、スイカまで、少しずつ試しながら育てている。

「できるのが目標だけど、目的じゃない」。 収穫のためではなく、経験そのものを楽しんでいるという。奥さんも畑をすることを喜び、おばあちゃんの野菜の味を思い出すこともあるという。畑に来るたびに景色は変わり、小さな変化に気づくのが何より楽しい。夏は毎日、冬でも1週間に一度は訪れる。ほとんど一人で畑に向き合う時間が、心を整えてくれる。

家から近いわけではない地域に通い続ける理由は、地域の空気が好きだからだ。自然があり、商店街があり、関わってくれる人たちがいる。会う頻度が増え、理由がなくても来たくなる。「住まないけどつながっている」感覚が、心地よいという。

畑を始めてから、日常も大きく変わった。 土や植物、微生物のことが気になり、自宅の庭でも育てるようになった。車に乗っていても畑が目に入り、つい見てしまうほどだ。都市に行くと息苦しく感じ、帰りたくなる。「両方いいけど、こっちがいい」と笑う。

将来は、アトリエのような拠点を持つ暮らしにも興味がある。旅人が泊まれ、歌ったり作業したりできる場所。井戸があり、自給自足できる家。畑から始まった関わりは、暮らしのイメージを少しずつ広げている。
川本さんにとって、畑は「住まなくても持てる、もうひとつの居場所」なのだ。